信賞も必要ですが、必罰は実行されているでしょうか。何にでも「罰」が必要だと言うことではありません。幹部や社員の意識改革をする為に、 時として、必要な「演技罰」があると言うことです。見せる必罰で望む姿勢が、社員や幹部・管理職に緊張感を与えることが必要です。
ある冬の日、車両70台保有の運送会社に訪問した際、ここの社長がおっしゃいました。
「市内の配送車が昼食時には30台位帰社するんだが、食事中(約1時間)ずっとエンジンをかけたままでいる。いつも言うんだが、なかなか実行しない。
特に冬は出発する時に寒いからだろうが、燃料費がバカにならないだろう!」と。「だから、俺が会社にいたら俺が止めて歩くんだ」と。
社長は、当然ながら管理職に言っているのでしょうが実行されていない。ということは、管理職が経費に対しての認識が薄く、危機感も無い。
当然、どうすれば実行できるかなどを考えていない。又一方では、社員寄りの考え方をしているのでしょう。だから、強いメッセージとして伝えていない、むしろ伝えられないのでしょう。
そこで、当方は昼食時に帰社してくる運転手の自家用車のカギを、明日の朝礼中の段階で全て預かりなさい。
その祭、「昼食時のアイドリングを止めろといつも言っているが直さない。
なので、今日からアイドリングを止めない者の自家用車のエンジンを同じだけ1時間かけておいてあげる。」と言って、実施されてみたらどうですか?とお話しをしました。
「わかった、やってみる」とおっしゃった1週間経過後、その社長からカギを預かったその日から「見事に全員がきちんと止めるようになった」と喜んでご報告を頂きました。
結果として、社員の自家用車の燃料を誰一人として減らすことなく改善ができた。
社員は、社長の業務命令だった事を実行しなかった責任が各自にあったから仕方がない。と、同時に「自分の損」になることは、したくないという心理予測が改善の要素であったと思います。
そして、このチャンスに管理職へ厳重なる「許さん!」という「喝」を入れる。この事で、今後の指示・命令の実行度が高まるという効果が発揮されると思います。
これは、あくまでも社員の意識改革における手段としての演技罰であり、臨機応変さも必要だということの一例です。
社員は、自分の身に降りかかる問題に対しては、特に敏感であり必ず避けようとします。時には、社員心理も考えて対策を練ることが必要であるかも知れません。